国家官僚の退職が止まらないというけど、本当に必要なのは「22時退庁」じゃなくて「20代1500万」キャンペーンだと思う件

さっきTwitterを開いたら、「河野担当相」がトレンド入りしている。何かと見に行くと、若手官僚の退職が激増しているという。

this.kiji.is

 

急増する退職とその背景

90年代の財務省ノーパンしゃぶしゃぶ以来、マスメディア、週刊誌問わず官僚は目の敵にされてきた。政治批判と同様に、官僚批判も大衆ウケするコンテンツとして、メディアには極めて使い勝手が良かったし、国民もそれを消費して楽しんだ。世間の官僚たたきは今に始まったことではないが、昨今それでも退職が止まらないという。

 

では、なぜ今更若手官僚の退職が急に増えているのか。理由は2つだろう。

 

1.20代を中心に転職が当たり前の価値観が広がりつつある。

→要は、官僚組織だけでなくどこの組織でも起きてるで、という話。トヨタ自動車三菱商事といった日本を代表する民間企業でも若手の離職が重要な問題になっているなんて話はよく聞く。

 

2.SNSの普及で隣の芝生があまりにも青く見えるようになった。

→インターネット・SNSの普及以前は、民間企業や他組織での知人の活躍が聞こえてくる機会と言えば、せいぜい同窓生ネットワークみたいなところに限られていたはずだ。これが、SNSの普及によって一変した。Facebookを開けば大学の同期が外資系企業やベンチャー企業で華々しく活躍する姿で溢れているし、なんならそうした彼らのほうが自分よりも暮らしぶりまで良かったりする。

不幸にも、これまで上手く隠れていた隣の芝生がありありと見えるようになってしまった。

 

そもそも官僚になるのはどういう人なのか

官僚の退職が増えたという前に、そもそも官僚になるのはどういう人なのか。

僕の大学の同期にも沢山の官僚がいるが、一つだけ断言できることがある。

それは、官僚になる人のほとんどが、東大や京大の中でも一握りの極めて優秀な層であり、かつ国益を慮る志の高い人達であるということだ。

20代で数千万プレイヤーになれる外資系金融や、トップコンサルティングファーム、合コン無敵の商社マン、そういったあらゆるカードと「国家官僚」というカードを比較して、その中から、「国家官僚」というカードを選び出した人たち。

要は、その世代の超トップ級、Best &Brightestな人材が、このように、自らの大義に基づき、傍から見れば、トチが狂ったとしかいえないこの上なく貴い職業選択をした結果だということを前提としてご理解いただきたい。

 

 「22時退庁」キャンペーンに思うこと

www.jiji.com

さて、世の中的な働き方改革の風潮も相俟って、昨今では官僚の深夜残業の抑制を目指し、「22時閉庁」を求める有志による署名活動が話題を呼んでいる。

Zホールディングス(ヤフー親会社)の川邉社長らをはじめ、産業界の著名人が名を連ね、国会対応に代表される官僚の働き方改革に向けたキャンペーンとして、多くの人が賛同しているという。

 

ただ、これを見て、僕はどうしても違和感が拭えない。「22時閉庁」が実現すれば本当に若手官僚の退職は減るか?と聞かれれば、どうしてもそれは片手落ちな気がするからだ。

 

先ほども述べた通り、官僚になっているのは、その世代のBest &Brightestな人たちであって、そうした人たちは往々にして、労働時間の多寡ではなく仕事のやりがい、そして報酬を重視する。忙しさはやりがいや報酬で穴埋めが効くが、その逆は効かないことが多い。

もちろん、政局重視の無意味な国家対応や、紙・Faxが蔓延るアナログな職場環境、それらの結果としての長時間労働という「働き方」に問題があることは疑いがない。

しかし、根本的に足りてないのは、報酬だと思うのだ。

参考までに、平成30年度の給与体系を貼っておく。

官僚の年収はいくら?35歳720万、50歳1250万、事務次官2300万。|次席合格元県庁職員シュンの公務員塾

この給与体系で世代トップの能力を持った人たちをリテインせよという仕事上のミッションがあったら、受け入れるヤツいるだろうか。(残業代があるという指摘もあるが、課や上司によるのが実情、ない場合も多いと聞く)

 

僕は若手官僚のリテインのために本当に必要なのは、「22時退庁」ではなく「20代1500万」キャンペーンなんじゃないかと昔から思っている。

 

・今の給与体系のママ、22時退庁が実現した世界

・今の残業時間のママ、20代1500万の給与体系が実現した世界

 

パラレルワールドはないが、どちらが実現したほうが本当に官僚の離職率が下がるか。どちららの世界になれば、官僚は「隣の芝生」に対して自分の芝生もそれなりに青いと思えるか。

 

そう考えると、やっぱり国家官僚のリテインに必要なのは、「22時退庁」キャンペーンではなくて、「20代1500万」キャンペーンなんじゃないかと思うのです。

 

もし「20代1500万」キャンペーンを真剣に検討しないとすれば、それは、Best & Brightestな人材を終身雇用前提で採用し、国家を運営する日本の官僚モデルそのものを考え直すべきタイミングなんじゃ?と思ったりするけれど、そっちは長くなりそうなのでまた別の機会に。

 

また好き勝手書いてしまった。ではでは。